■ 薪ストーブのぬくもりと悲劇の始まり 湯舟 武 さん

仕事柄、英国の家庭に何度か招かれたことがあり、暖炉を中心に家族や来客が集まって団欒する光景を若い頃から羨ましくみえ、機会があれば暖炉を入れたいと思っていました。
私も既に還暦を迎える年齢ですが、縁あって3年前に薪ストーブを導入することができました。機種はVC社のアンコール、洋間によく似合う優れものです。
シーズンを重ねる毎に扱い方の勘所も分かるようになり、今では冬の主役として家族の誰もがその存在を認め、寒さの到来を楽しみにしています。ところがこのストーブライフはなかなか大変なことで、まさか悲劇の始まりになろうとは考えてもみませんでした。

自分のスタイルは本業が会社勤務、副業として親から引き継いだ農業を営んでいます。
現在は家庭で消費する米や野菜を作っている程度ですが、春以降秋口まで130アールを管理する過酷な農作業、週末をのんびり過ごす暇など到底ありません。
従来の生活なら秋の収穫が終われば一段落できるところですが、今では晩秋から初春にかけて翌々年の薪を調達する仕事が増え、のんびりしているどころか年中無休の生活となっています。
冷静に考えれば、これらのすべては楽しいことだとおもっていますが反面、辛いものがあります。
またどういうわけか薪ストーブの愛好者となると、今まで以上にスローライフやエコを意識するようになり、農作物については有機野菜、薪については火持ちのよい樹木の調達を心掛けるなど、今まで意識しなかったことが次から次へとでて来ると同時に、予想を超えた費用もかかってきます。

薪割には貯金を殖やす感覚と似たところがあり、山になればなるほど満足感と達成感が高まり、春先には背丈ほどの山になるまで積み上げます。
一番嫌いなことは、これらの薪を片づけることであり、何日間か掛けて妻と一緒に薪棚へ積み上げました。
今年は積み上がって間もなく見事に崩れ(写真)、梅雨を迎えた今でも放置されたままです。梅雨空のうっとうしい中、いったい誰が積み直すのでしょう?このような気苦労と労力がいつまで続くか分かりませんが、薪ストーブのぬくもりが自分達を癒してくれるからこそできることだと思い、ストーブ中心のスローライフを楽しんでいます。

スタッフからのコメント

「薪ストーブはスローライフって言うけれど全然スローライフじゃない!」とおっしゃっていたご様子がとても楽しそうでした。お邪魔する度にパワーを頂いています。
(スタッフ:兵藤)